開発におけるベースプロセス:Automotive SPICE®

安全/非安全に関わらない製品開発への取り組みや規格対応領域の拡大へ対応するために、その土台となる「統合開発プロセス基盤」として、自動車業界の知見や教訓を基にして開発されたA-SPICEを上手く活用する必要があります。

業界における重要性

1980年代後半は、ハードウェアの開発が主に占めていた自動車開発において、ソフトウェアの開発は比較的新しいことから、多くのメーカは、ベストプラクティスに繋がるような開発プロセスを持っていませんでした。また、要件の管理と制御が不足し、リソースマネジメントが十分でない等の問題も発生していました。

そこで、1990年代初めに、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)は、 Automotive SPICE® ※1(以下、A-SPICE)の基となるISO/IEC 15504(現在では、ISO/IEC 33000シリーズに移行)の議論を開始し、1998年にはテクニカルレポート(TR)を発行しました。その後、TRは改良され、2006年にISO/IEC 15504というプロセスモデルとアセスメント手法の規格一式として完成されました。ISO/IEC 15504のIS化と並行して、欧州主導により、製品開発における適切な遂行能力を実証する方法として、自動車業界用に開発されたのが、A-SPICEです。

近年では、車載システム(特に車載ソフトウェア)の役割が非常に大きくなり、重要な役割を担っています。複雑化、大規模化が進むとともに、品質や安全性、サイバーセキュリティ対応について、十分考慮されていることを説明する必要があり、この「説明責任」のためにもA-SPICEは重要な役割を果たします。取引先は、この「説明責任」に関する対応能力の一部としてA-SPICEのレベル2もしくはレベル3の対応を要求しており、自組織が要求レベルに到達していない場合には、その対応の改善を要求され、それでも要求レベルへの到達が出来ない場合には、継続した取引が難しくなっています。

また、以前に比べ、組織内外の人の流動性も高くなっており、業界内で共有されているベストプラクティスを用いることは、「説明責任」に加え「組織能力の継続性」にも寄与することは明らかです。取引先への対応とは別の視点で、自組織の継続的な発展という視点でも有効なものであると言えます。

 

※1 Automotive SPICE®は、Verband der Automobilindustrie e.v. (VDA)の登録商標である。





A-SPICEは、機能安全やサイバーセキュリティ対応のベースプロセス

A-SPICEは、機能安全やサイバーセキュリティ対応のベースプロセスである。 機能安全規格であるISO 26262において、QM(Quality Management)の場合、ISO 26262へ準拠する要件が無いことを意味しますが、リスクを管理するための品質プロセスの十分性を示すことが求められます。この品質プロセスが十分であることを示す方法として、A-SPICEに準拠した開発が挙げられます。 また、サイバーセキュリティ規格であるISO/SAE 21434では、安全関連のみならず非安全関連に対しても考慮する必要があり、非安全に対するベースプロセスの充実が、より一層顕著化しています。

よって、安全/非安全に関わらない製品開発への取り組みや規格対応領域の拡大(ISO 26262, ISO 21448, ISO/SAE 21434, ISO 24089など)へ対応するために、その土台となる「統合開発プロセス基盤」として、自動車業界の知見や教訓を基にして開発されたA-SPICEを上手く活用する必要があります。 






A-SPICEの主要プロセス群

A-SPICEは、車載システム開発プロセスのフレームワークを定めた業界標準のプロセスアセスメントモデルです。ISO/IEC 33000シリーズの要求事項に従って作成されており、プロセスアセスメントにより、開発プロセスを定量的に測定し、可視化し、評価するフレームワークになります。そのフレームワークには、独自のプロセス参照モデル(PRM)とプロセスアセスメントモデル(PAM)を含んでいます。

プロセス参照モデル(PRM)は、ISO/IEC 12207をベースに作成されたものであり、自動車業界に合わせて3ライフサイクルカテゴリ、8プロセス群で構成されています。

また、多くの取引先が要求する16プロセスで構成されているVDAスコープというものがあり、調達プロセスグループからACQ.4、エンジニアリングプロセスグループからSYS.2,3,4,5, SWE.1,2,3,4,5,6、管理プロセスグループからMAN.3、支援プロセスグループからSUP.1,8,9,10が選定されています。

近年、欧米では、前述のVDAスコープに加え、拡張VDAスコープとして7プロセス(SPL.2, SYS1, MAN.5, SUP.2, SUP.4, SUP.7, REU.2)が追加され、計23プロセスの要求が出始めています。

Automotive SPICE



A-SPICEのプロセスアセスメントモデル

プロセスアセスメントモデル(PAM)の中に、能力を可視化するための能力レベルが定められています。

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その能力レベルを測定するために、プロセス属性が定義され、プロセス属性の達成を評価するためにプロセスの実施指標(能力レベル1の評価に使用される各プロセスにおける基本プラクティスと作業成果物)と、プロセスの能力指標(能力レベル2~5の評価に使用される共通プラクティスと共通リソース)が定義されています。

プロセス属性/PA(Process Attribute):
各プロセスの能力を評定するために、定義された測定項目

基本プラクティス/BP(Base Practice):
各プロセスの目的を達成するために、必要なタスクおよび活動を定義したプラクティス(活動重視)

作業成果物/WP(Work Product):
各プロセスの目的を達成するために、作成されたエビデンス(結果重視)

共通プラクティス/GP(Generic Practice):
全プロセスの全ての能力レベル/プロセス属性毎に定義され、主に活動に関する指標

共通リソース/GR(Generic Resource):
全プロセスの全ての能力レベル/プロセス属性毎に定義され、主にインフラ関係(人材、ツールなど)の指標





A-SPICEのプロセス能力評価

A-SPICEのプロセス能力評価は、プロセス座標と能力座標の2次元によって表すことができます。取引先から要求があった場合、該当する全てのプロセスが要求レベルに達していなければなりません。

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サイバーセキュリティ対応: Automotive SPICE for Cybersecurity







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