Fuel EU Maritime: コンプライアンスを確保するための準備

2025年1月1日から、FuelEU Maritimeにより、EU/EEA海域を航行する船舶が使用する燃料には、ライフサイクル(Well-to-Wake)ベースのGHGエネルギー強度に一定の要件が課されます。最初のステップとして、2024年8月31日までにモニタリングプランを準備し、認定検証機関に提出します。この法令関連ニュースでは、何を準備すべきかについて詳しい情報を提供します。

船舶の所有者および管理者に関係します。

FuelEU MaritimeによるGHG強度に関する要件の概要 IMO MEPC 81: negotiations on new GHG reduction requirements continue

202511日から、EU/EEA内で、またはEU/EEAへ航行する船舶は、その国籍を問わず、航行に使用するエネルギーの年間平均GHG強度が一定のレベル以下であることが要求されます。GHG強度は、エネルギー単位あたりのGHG排出量(gCO2e/MJ)として算出され、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)を含みます。

GHG排出量は、船舶上でのエネルギー使用による排出に加え、燃料の採掘、、生産、輸送に関連する排出も含めて、ライフサイクル(Well-to-Wake)ベースで計算されます。この規則には、風力支援推進を利用した船舶を対象とする条項も含まれています。

GHG強度の要件は、2020年の基準値である91.16 gCO2e/MJに対する減少率として設定されています。要求される減少率は、2050年まで5年ごとに段階的に上がります。例えば2025年から2029年末までの間であれば、2%のまま据え置かれます。

2025

2030

2035

2040

2045

2050

減少率(%

2%

6%

14.5%

31%

62%

80%

要求されるGHG強度(gCO2e/MJ

89.3

85.7

77.9

62.9

34.6

18.2

航行、範囲

FuelEU MaritimeによるGHG強度の要件は、EU/EEA内における航行および寄港に使用されたエネルギーには100%EU/EEAとの間の航行に使用されたエネルギーには50%適用されます。回避的な行動を防ぐため、EU/EEA外であってもEU/EEAの港から300海里以内の積み替え港で停泊するコンテナ船は、積み替え港からのショートレグだけでなく、EU/EEA域外からその港への航海で使用されたエネルギーの50%も含める必要があります。

GHG強度の要件は、商業目的で貨物または旅客を輸送する5,000 GT超の船舶に適用されます。オフショア船舶には適用されません。上記の範囲は、2027年末までに予定されているレビューによって変更される可能性があります。

FuelEU Maritimeでは、2030年以降のコンテナ船および旅客船による陸上電力の使用についての要件も設定されています。規則のこの部分に関する詳細は「参考資料」を参照してください。

コンプライアンスプロセス

対象となる海運会社

この要件は、国際安全管理コード(ISM Code)によって課される義務と責任を含めて、船舶の運航に責任を負う立場にある、船舶所有者である海運会社、船舶管理者や船舶傭船者などの法人または個人に適用されます。

EU ETSとは対照的に、FuelEU Maritimeにおける有責企業はISM Companyでなければならず、登録済みの所有者に責任を留保することはできません(所有者もISM Companyである場合は、この限りではありません)。この理由から、EU ETSFuelEU Maritimeとでは、船舶に対する有責企業が異なる場合があります。それぞれの有責企業は、管轄国に登録済みでなければなりません。これはEU ETSコンプライアンスにおける「管轄国(Administering Authority)」と同じです。

企業が変わった場合、その海運会社は(どの年でも1231日の時点で)その1年間にわたるコンプライアンスの責任を負います。ただし、以前の企業は変更後、可能な限り速やかに、エネルギー使用量と排出量を報告·検証する必要があります。

コンプライアンスの相殺(プーリング)

FuelEU Maritimeには、船舶のフリート全体でコンプライアンスを達成するという選択肢があります。これは、各船舶がそれぞれ異なる企業に所属している場合も同様です。つまり、個々の船舶が必ずしも要求されるGHG強度を達成しなくても、他の船舶に頼って、合計のGHG強度のレベルを上限値以下に抑えることで、要件を達成することができるという意味です。

コンプライアンス剰余の貯蓄(バンキング)と前借(ボローイング)

ある船舶の平均GHG強度が上限値以下だった場合、その超過達成分に対応するGHG排出量(コンプライアンス剰余)を、後続のコンプライアンス期間で使用するために貯蓄することができます。同様に、船舶は後続の期間から2%まで、連続する2期間に限り、コンプライアンス剰余を前借することができます。前借したコンプライアンス剰余には、後続の期間で10%の罰金が付きます。

罰金

船舶のGHG強度が上限値を超えた場合、超過した量に比例して罰金を支払う必要があります。上限値と実際のGHG強度の差に、エネルギー使用量を乗算して算出した金額となります。連続して2回以上の報告期間にわたって上限値を超過すると、罰金は徐々に増加します。上限値の超過分は、船舶の実際のGHG強度に基づくエネルギーとして計算に使用されます。VLFSOエネルギー等価で1トンあたり2,400ユーロ、または不遵守エネルギー使用量1 GJあたり約58.50ユーロの罰金が適用されます。したがって、罰金は高額になる可能性があります。

報告と検証

エネルギー使用量および排出量の報告と検証は、既存のEU Monitoring, Reporting and VerificationMRV)システムとは別の方式で行います。ただし、MRV規則の要素を転用して、FuelEU Maritime規則に対応することが可能です。

この規則で義務付けられるデータのモニタリングおよび報告に用いる手法を記述したFuelEU Maritimeモニタリングプランを、2024831日までに、(DNVなどの)検証者に提出する必要があります。このプランは、現在のMRVモニタリングプランに追加する形で作成しますが、その一部を転用することができます。

EU/EEA諸国を航行する船舶は、202511日までに、承認済みのFuelEU Maritimeモニタリングプランを装備する必要があります。

FuelEU Maritimeへの準備を始めるには

831日の期限が刻々と迫っています。早めの準備を強く推奨します。

FuelEU Maritimeの準備について、その他の有益な情報:

FuelEUモニタリングプランの検証に関連して、新しい文書の提出に求められる要件は、船舶のタイプによって大きく異なります。

  • 旅客船/コンテナ船の場合、陸上電源装置に関連する文書が必要です。
  • 燃料電池、ゼロエミッション技術、または風力支援推進など、その他の設備が船舶に搭載されている場合、それを確認するための文書も、プランの検証に先立って必要です。

さらに、バース水域における船舶の確定済みの総電力需要量も明記する必要があります。これはデフォルトでは、メインエンジン(ME)電力に基づく値となりますが、船舶の電力調査表から取得することも可能です。DNV船級以外の船舶で、デフォルト以外の選択肢を選ぶ場合、これらの文書も提出する必要があります。

船舶の「船舶履歴情報」および「安全管理証書」も、船舶を管理する企業を確認するために必要です。

ステップ1

FuelEU Maritimeモニタリングプランおよび補足文書を準備します。

DNVはお客様向けに、20245月中旬からFuelEU Maritimeモニタリングプランのオンラインフォームの提供を開始する予定です(DNVのお客様にはメールで通知いたします)。DNVの既存のEU MRVのお客様は、検証済みのMRVプランを基に、このプランを作成することができます。

ステップ2

フリートの他の船舶用にプランをコピーします。

FuelEU Maritimeモニタリングプランの全セクションを、フリートの船舶間でコピーすることも可能です。MRVモニタリングプランのオンラインフォームと同様ですが、それより広範囲となります。

ステップ3

EU文書の公開後、DNVにプランを提出して検証を求めます。

EUの公式文書が公開されるまでは、モニタリングプランをDNVに提出して検証を求めることはできません。EU文書は、2024年の第2四半期末に公開される予定です。そのため、モニタリングプランを検証者に提出できるのは、7月および8月となります。DNVは、提出が可能になった時

企業はさらに、FuelEU Maritime規則に適合する目的で新たにモニタリングと報告を行うデータが含まれるよう、管理システムおよびデータギャップ手順を補完する必要があります。この理由から、FuelEUモニタリングプランのオンラインフォームには、全体的な管理システム作成の概要も含まれています。FuelEU Maritime規則と改正後のMRV規則の両方に由来する、この新しい要件では、企業は排出量の算出からデータの編纂までのデータフローのプロセスを記述しなければならないと規定されています。さらに、企業は潜在的な影響と各ステップで起こりうるインシデントの確率を記述し、インシデントによるリスクを軽減するための管理措置を決定する必要があります。

DNVは、MRV排出量報告書とFuelEU Maritime報告書の検証を容易にするため、上記の情報を実用的なデジタル形式でご提供いただくようお願い申し上げます。FuelEUモニタリングプランの検証に関する規則上、プランの評価開始に先立って、必ずこの情報をご提供いただく必要があります。

推奨事項

  • 船舶所有企業は、5月中旬に予定されているFuelEU Maritimeモニタリングプランのオンラインフォームのリリース後、プランの準備を開始するようお勧めします。作成したプラン草案を、フリートの他の船舶用にコピーすることができます。検証を目的としたDNVへのプラン提出は、2024年の第2四半期末に予定されている、EUの公式文書が公開された後でなければ行えません。
  • DNVはさらに、2024514日に行われる、当社のAsk the Expertウェビナーへのお客様のご参加をお勧めします。このウェビナーでは、FuelEU Maritimeについて討議し、DNVのデジタルツールを利用してコンプライアンスを確保する方法をご紹介します(当社のお客様には招待メールを別途お送りします)。
  • 商業契約を見直し、海運バリューチェーンの中で、どのようにコンプライアンスを管理·補償するかを明確にしましょう。

参考文献

お問い合わせ先

  • お客様専用:
    DATE – Veracityプラットフォームのマイサービスを介して技術専門家に直接アクセスできます。
  • その他の場合:
    お近くのDNVオフィスを検索するには、当社のオフィス検索をご利用ください。
  • DNV 日本支社: kobe.maritime.bdd@dnv.com までメールにて
 

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